【農家向け】白菜の育て方・栽培方法は?病害虫対策から失敗しないコツまで解説
白菜(ハクサイ)の栽培方法を、秋田・北海道・山梨・長野・東京・神奈川・千葉・三重・京都・岡山・鹿児島・長崎の県の指針や試験場の成果、JA、農研機構、農林水産省、農畜産業振興機構(ALIC)の資料で比べました。いつ播いて植えるか → どの品種を選ぶか → どんな畑に → どう育苗して植えるか → 追肥とかん水 → 結球の仕組みと失敗例 → 病害 → 害虫 → いつ穫り、冬をどう越すかの順に、資料が一致する点と違う点、その理由を整理しています。
白菜は、各資料に共通して「冷涼な気候を好み、低温に当たると花芽ができ、結球には低温期までに十分な葉数が要る」作物として扱われています。この性質から、暖地から中間地では秋まきの秋冬どりが基本になり、高冷地や北海道では春から夏に播く作型が組まれ、冬どり・春どりは耐寒性や晩抽性のある品種で成り立っています。播き時期が遅れて葉数が足りないと結球せず、早すぎて高温期にかかると害虫や軟腐病が増える。この「いつ播くか」の判断が、品種・施肥・病害虫・収穫までの多くの違いにつながっています。
農畜産業振興機構の資料(2026年1月)では、令和6年産の出荷量は茨城県と長野県が上位で、東京の市場には11月から翌5月は茨城産、6〜10月は長野産が中心に入荷しています。数値はいずれも、各資料が対象とした地域・作型・品種での目安です。有機栽培の事例(鹿児島県)や種苗メーカーの栽培案内(トーホク)は、吹き出しの条件欄にそのことを書いています。農薬については、商品名や成分名は挙げず、使用の際は登録内容(作物・病害虫・使用回数・収穫前日数)をラベル等で必ず確認してください。
3. 畑の準備:排水・pH・連作回避と施肥設計
各機関の見解のまとめ
- 一致している点:白菜は水分を多く必要とする一方で過湿に非常に弱く、排水の良い畑を選ぶ・高畝にする点は、秋田県・鹿児島県・東京都・農林水産省が共通しています。耕土が深く膨軟な土壌に改良し(秋田県・鹿児島県)、連作は根こぶ病や生理障害を助長します(鹿児島県・トーホク)。根こぶ病は酸性土壌で多発するため土壌酸度の矯正が挙げられています(秋田県・千葉県・長崎県)。
- 違う点:窒素施肥量は、秋田県の施肥例で基肥15+追肥8kg/10a、北海道の施肥標準で22〜24kg/10a、長野県の地域慣行基準で18〜25kg/10a(地域別)、長崎県の慣行レベルで21kg/10a(目標収量8t)と幅があります。マルチ栽培では全量基肥とし(長野県・北海道)、マルチなしでは結球始めまで分施する(北海道)など、施用法も分かれます。
秋田県 秋田|露地・秋冬どり(直播)
- 畑の選定:比較的水分を多く必要とするが過湿には非常に弱く、排水の良いほ場を選ぶ。根こぶ病の発生が心配されるところは避ける
- 土壌改良:ハクサイの根は細根が多く深く分布するので、耕土が深く膨軟な土壌に改良する。黒ぼく土や火山灰土壌ではリン酸を多く投入し、20cm以上深耕する。初期生育の促進と発芽揃いを良くするためていねいに砕土する
- 施肥:基肥重点とするが、ホウ素欠乏が出やすいのでチッソ・カリの過剰施用を避ける。施肥例(成分量kg/10a)は基肥でチッソ15・リンサン15・カリ15、追肥でチッソ8・カリ8。施用量は完熟堆肥2,000kg、苦土石灰200kg、苦土重焼燐30kg、FTE 4kg、高度化成(13-13-13)110kgを基肥、高度化成(17-0-17)50kgを追肥
- 畝立て:早生種では畝幅70cm・株間40cm、中晩生種では畝幅75cm・株間45cmとし、排水不良地では高畝とする
北海道 北海道|早春まきハウス・春まきトンネル・春まき・夏まき
- 施肥標準(kg/10a):早春まきハウスは窒素24・リン酸18・カリ22(基準収量10,000kg)、春まきトンネルは窒素24、春まきは窒素22、夏まきは窒素24で、リン酸18・カリ22
- 窒素、カリは結球始めまでに分施することとするが、トンネル作型などのマルチ栽培では基肥に全量を施用する。マルチを使用しない栽培では緩効性窒素入り肥料の全量基肥施用も有効
- 初期生育確保のため、基肥における速効性窒素肥料は6kg/10aを下限とする。土壌診断値(硝酸態窒素、トルオーグ法リン酸、交換性カリ、熱水可溶性ホウ素)に応じて基肥量を増減する
- ホウ素は適正領域が狭く、過剰害が発生しやすいことから施用量を遵守する
長野県 長野|全面マルチ栽培が多い|環境にやさしい農業技術集
- 地域慣行基準(化学肥料の窒素成分量)は南佐久25kg/10a、北佐久・木曽20kg/10a、上記以外の地域18kg/10a。5〜6月出荷の場合は2割上乗せ
- よい結球部を作るためにはよい外葉を作ることが必要で、初期生育を順調に進めることが収量増につながる。はくさいは耐肥性が強く施肥量の増加が収量の増加に結びつきやすいが、多肥は軟腐病などの病害や心腐れ症などの生理障害の発生を助長する
- 10a当たりの養分吸収量は窒素18〜28kg、リン酸6〜10kg、カリ30〜50kg程度で、特にカリの吸収量が多い。窒素吸収量は通常20kg/10a程度で、それ以上吸収するとぜいたく吸収気味となる
- 外葉の展開期から結球初期(定植後4〜6週頃)まで急速な吸収が行われる。はくさい栽培の多くは全面マルチ栽培のため基本的に全量を基肥とし、濃度障害の心配がある場合は緩効性肥料を活用する。堆肥からの肥料養分を考慮し、地力に応じた適正な施肥を行う
長崎県 長崎・諫早湾干拓地|黄ごころ85|秋冬どり(環境保全型農業の手引き2011)
- 慣行基準は窒素施用量21kg/10a、目標収量8t/10a。過去の研究結果から、ハクサイの窒素吸収量は目標収量8t/10aで15kg/10a、収量10t/10aで20kg/10aが必要
- 諫早湾干拓地は土壌有機物の消耗が激しく可給態窒素も低いため、作付前に牛ふん堆肥2t/10a等を施用し、前後作に緑肥作物を導入するなど土壌肥沃度の増進に努める。有機質肥料は基肥として定植1週間前までに施用する
- 化学肥料を基肥として利用する場合は、畦内施肥により2〜3割の窒素施肥量を削減できる。被覆尿素やCDUを活用すると施肥窒素2割を削減でき、基肥一発の省力的な体系になる
- 作付前に土壌診断を実施し、環境を考慮して施肥量を決定する
東京都 東京・黒ボク土|露地|持続性の高い農業生産方式
- 湿害に弱く、土壌の通気性が悪いと根の伸長が妨げられる。有効土層を十分に確保し根域を広くする目的で深耕や有機物施用が大切
- 肥料依存度が高いので、やや多めの施肥が必要。浅根性で酸素要求量が大きいことから排水には十分配慮する
- 窒素の吸収パターンは連続吸収に近い山形。初期生育を促進することが重要で、生育初期の養分供給が十分に確保できる施肥設計を立てる
鹿児島県 鹿児島|露地(有機栽培の事例)
- 施肥量は牛ふん堆肥2,000kg/10a、鶏ふん200kg/10a
- 土壌に対する適応性は広いが、通気性が良く肥沃で深い土壌が好ましい。水分を多量に必要とする反面、過湿には弱いため排水対策は重要。水田では高畝とする
- 連作すると病害の発生が助長される。石灰・ホウ素・苦土欠乏による生理障害も連作の影響が大きい
トーホク(種苗メーカー) 種苗メーカーの栽培案内(家庭菜園向けの記述を含む)
- 土壌酸度はpH6.0〜6.5。連作障害は2〜3年あける
- 連作すると根こぶ病などの土壌病害が発生するので注意する。連作対策として根こぶ病に強い耐病性品種を使うことも有効
比較:窒素施肥量と施用法
| 機関 | 条件 | 窒素(kg/10a) | 施用法 |
|---|---|---|---|
| 秋田県 | 露地・秋冬どり、施肥例 | 基肥15+追肥8 | 基肥重点。追肥は結球始めまでに2回 |
| 北海道 | 早春まきハウス(基準収量10t) | 24 | 診断値で増減 |
| 北海道 | 春まきトンネル/春まき/夏まき | 24/22/24 | 結球始めまでに分施。マルチは全量基肥 |
| 長野県 | 地域慣行基準 | 南佐久25、北佐久・木曽20、その他18 | 全面マルチで全量基肥が基本 |
| 長崎県 | 諫早湾干拓地、慣行レベル(目標8t) | 21 | 畦内施肥・肥効調節型で2〜3割減。有機質代替の体系も |
| 東京都(試験) | 2〜3月どり、黒ボク土 | 20(全層)または16(基肥) | — |
なぜ違うのか
- 目標収量と吸収量:長崎県は目標収量8tで窒素吸収量15kg、10tで20kgとし、長野県も吸収量を通常20kg程度としています。施肥量の違いは、ねらう収量と地力、肥効率の見込みの違いとして読めます。北海道は基準収量を作型ごとに変え、土壌診断値で基肥量を増減する仕組みです。
- マルチの有無:長野県は全面マルチ栽培が多いため全量基肥を基本とし、北海道もマルチ栽培では基肥に全量を施用するとしています。追肥ができない栽培では、緩効性肥料で濃度障害を避ける考え方が共通しています。
- 多肥の副作用:長野県は多肥が軟腐病や心腐れ症を助長するとし、秋田県はチッソ・カリの過剰がホウ素欠乏の原因になるとしています。収量を狙って増やすほど生理障害・病害のリスクが上がる点は、各資料に共通する注意です。