そら豆の育て方
そら豆(ソラマメ)の育て方を、鹿児島・熊本・福岡・高知・鳥取・島根・千葉・茨城・宮城・青森の県の試験場や普及機関、JA、農畜産業振興機構(ALIC)の資料で比べました。いつ播くか → どの品種で、種子に低温処理をするか → どんな畑に → どう播いて植えるか → どう仕立てて支えるか → 冬と春の温度をどう守るか → 肥料と水 → 病害虫 → いつ穫るかの順に、資料が一致する点と違う点、その理由を整理しています。
同じそら豆でも、鹿児島では9月に播いて冬から収穫が始まり、青森のハウスでは2月下旬に播いて7月上旬まで収穫する作型が示されています。各機関の資料に共通するのは、そら豆は冷涼な気候を好み、花芽ができるのに低温が要るという性質です。暖かい地域はこの性質を利用して種子を冷やして花を早め、寒い地域は冬をどう越すかに工夫を重ねています。この違いが、播き時期から管理までの多くの違いにつながっています。
数値はいずれも、各資料が対象とした地域・作型・品種での目安です。家庭菜園向けの資料(鳥取県伯耆町、高知県「こうち農業ネット」の家庭菜園ページ)は、吹き出しの条件欄にそのことを書いています。
5. 株間と仕立て・摘心・摘莢:莢の数を取るか、3粒莢を取るか
各機関の見解のまとめ
- 一致している点:太い枝を選んで本数を決め、花や莢を減らして1節1莢に近づけるという考え方は、熊本県の2つの資料とJA全農ふくれん(福岡)で共通しています。
- 違う点:残す枝の数は3〜4本(熊本県・鹿児島県・福岡)から、家庭菜園向けの5〜6本(高知県)、6〜7本(伯耆町)まで。株間は30〜60cm、摘心の位置も「25〜30節程度」「最上の莢の上に4葉」「着莢節より15節前後」と分かれています。千葉県では管理を省く放任栽培も増えています。
熊本県農業研究センター 熊本・玉名、八代の水田平坦地|露地|3本仕立て1条誘引
- 1茎当たりの着莢数が多くなるほど収量は増える。ただし着莢数が多くなると、商品価値の高い3粒莢以上の莢の比率が下がり、1莢重も下がる
- 3本仕立て1条誘引では、1茎当たり12莢を着莢させ、その上に4葉を残して摘芯すると、品質の高い莢を多く収穫できる
- 従来より多く着莢させ、摘芯までの葉数も多くなるため、光環境を考えて栽植様式は畝幅110〜120cm、株間60cm程度(10a当たり1,515〜1,388株)とする
- 着莢を確認した後、幼莢の時期に1節1莢になるよう摘莢し、摘芯は最上部の莢の着生を確認してから行う
熊本県 熊本・平坦地域|ハウス
- 畦幅120cm、株間55cm(1,510株/10a)を標準とする。密植すると採光や通風が妨げられ、結実不良になる
- 整枝は1月頃に行い、基本は3本仕立て
- 摘花・摘莢は1節1莢を目標に行う。蕾の頃から1節2花を残し、着莢後は3粒莢以上を残す
鹿児島県 鹿児島|露地(有機栽培の事例)
- 1条L字型仕立て:畝幅120〜160cm。株間50cmなら3・4本交互仕立て、45cmなら3本仕立て
- 2条U字型仕立て:畝幅160〜180cm、株間40〜50cmで4本仕立て
- 植え付け後、本葉5枚を残して主枝を摘心する。主枝の1節目と2節目から出る2本の側枝を使い、3節目以降の側枝は除いて、下の節位の分枝の伸長を促す
- 摘心は25〜30節程度とする。晩霜の恐れがあるときは摘心を遅らせる
JA全農ふくれん 福岡|早出し(低温処理+トンネル)
- 4本または3本仕立てとし、日当たりが均等になるように誘引する
- 1節1莢を目標に、蕾のときに1節2花に摘花し、着莢を確認した後、莢の長さが6cmになるまでに1節1莢にする。その後、不良莢(1粒莢、曲がり莢、から莢)が出たら早めに摘莢する
- 莢の付き具合を見て、着莢節より15節前後で摘芯する。摘芯後は老化へと進むので、早めの収穫を心がける
高知県 高知|家庭菜園向け
放任でもよいが、各枝が1〜2節開花した頃に、徒長した枝や細く小さい枝を分岐点から切り取り、太い枝を5〜6本残すと大サヤ率が増える。
鳥取県伯耆町(監修:西部農業改良普及所) 鳥取西部|家庭菜園向け
- 幅120〜150cm、高さ20cmの畝を立て、株間30〜40cmで定植する
- 草丈が50〜60cmに伸びたら、太い枝を残して6〜7本に整枝する
- 茎が伸びすぎて倒れそうになったら、先端の茎葉を20cmほど取り除く。新芽につきやすいアブラムシを減らす効果もある
JA山武郡市(千葉県) 千葉・九十九里沿岸|秋まき
- 一般的に、3粒以上の整粒が入ったL級規格が市場評価が高い。L級で収穫するには、生育期間中に枝や花の数を管理する作業が必要
- 近年は、高齢化や労働力不足、費用対効果を考え、管理作業を省力化する放任栽培が増えている。L級の発生は減るが、収穫莢数で収量を確保して生産力を維持している
比較:栽植と仕立て
| 機関 | 条件 | 畝幅 | 株間 | 残す枝の数 | 摘心 |
|---|---|---|---|---|---|
| 熊本県(新しい技術) | 露地・1条誘引 | 110〜120cm | 60cm程度 | 3本 | 1茎12莢の上に4葉残す |
| 熊本県(耕種基準) | ハウス | 120cm | 55cm | 基本3本 | —(1節1莢・3粒莢以上を残す) |
| 鹿児島県 | 露地・1条L字型 | 120〜160cm | 45〜50cm | 3〜4本 | 25〜30節程度 |
| 鹿児島県 | 露地・2条U字型 | 160〜180cm | 40〜50cm | 4本 | 25〜30節程度 |
| JA全農ふくれん | 福岡・早出し | — | — | 3〜4本 | 着莢節より15節前後 |
| 高知県 | 家庭菜園向け | 1.1〜1.2m(普通畑) | 50cm | 5〜6本 | — |
| 伯耆町 | 家庭菜園向け | 120〜150cm | 30〜40cm | 6〜7本 | 倒れそうなら先端20cmほど |
なぜ違うのか
- ねらう莢:JA山武郡市によると、市場では3粒以上入ったL級の評価が高く、L級をねらうには枝や花の数を管理する作業が要ります。熊本県の試験では、1茎当たりの莢を増やすと収量は増える一方で、3粒莢以上の比率と1莢重は下がりました。3粒莢をねらって枝と莢を絞るか、莢数で量を取って管理を省くか、という選び方の違いとして読めます。
- 株間と光:熊本県は、莢と葉を多く残す整枝にあわせて、光環境を考え株間を60cm程度に広げるとしています。ハウスの耕種基準も、密植すると採光・通風が悪くなり結実不良になるとしています。
- 家庭菜園向けは枝が多め:高知県と伯耆町の家庭菜園向け資料は5〜7本と多めの枝数を示していますが、その理由は書かれていません。