そら豆の育て方
そら豆(ソラマメ)の育て方を、鹿児島・熊本・福岡・高知・鳥取・島根・千葉・茨城・宮城・青森の県の試験場や普及機関、JA、農畜産業振興機構(ALIC)の資料で比べました。いつ播くか → どの品種で、種子に低温処理をするか → どんな畑に → どう播いて植えるか → どう仕立てて支えるか → 冬と春の温度をどう守るか → 肥料と水 → 病害虫 → いつ穫るかの順に、資料が一致する点と違う点、その理由を整理しています。
同じそら豆でも、鹿児島では9月に播いて冬から収穫が始まり、青森のハウスでは2月下旬に播いて7月上旬まで収穫する作型が示されています。各機関の資料に共通するのは、そら豆は冷涼な気候を好み、花芽ができるのに低温が要るという性質です。暖かい地域はこの性質を利用して種子を冷やして花を早め、寒い地域は冬をどう越すかに工夫を重ねています。この違いが、播き時期から管理までの多くの違いにつながっています。
数値はいずれも、各資料が対象とした地域・作型・品種での目安です。家庭菜園向けの資料(鳥取県伯耆町、高知県「こうち農業ネット」の家庭菜園ページ)は、吹き出しの条件欄にそのことを書いています。
9. 病害虫:アブラムシとウイルス病、赤色斑点病
各機関の見解のまとめ
- 一致している点:アブラムシ類がモザイク病のウイルスを媒介するため、アブラムシ対策が欠かせない点は、千葉県とJA全農いばらきで共通しています。赤色斑点病(チョコレート斑点病)を主な病害に挙げる点も、千葉県、JA全農いばらき、島根県、伯耆町で共通です。
- 違う点:土の中から感染する「えそモザイク病」を取り上げているのは、今回比べた資料では千葉県とJA全農いばらき(茨城)です。JA山武郡市(千葉)も、産地で土壌伝染性のウイルス病が増えていると書いています。
JA全農いばらき 茨城|未成熟ソラマメ
- 未成熟ソラマメでは、えそモザイク病、モザイク病、赤色斑点病、褐斑病、輪紋病、さび病、立枯病、茎腐病、菌核病、アブラムシ類などが発生する
- えそモザイク病は土壌伝染し、ウイルス病の中で最も被害が大きく、進むと萎縮・枯死する。モザイク病は主にアブラムシ類が媒介するので、媒介虫の防除が必要
- 赤色斑点病・褐斑病・輪紋病は病徴が似ている。進むと莢にも発病し、品質低下や減収を招く
- アブラムシ類の主なものはマメアブラムシで、開花・結実期にあたる4月頃から急速に増える
千葉県 千葉|未成熟そらまめ
- モザイク病:無病株から採った種子を使う。苗床には発芽直前から白寒冷紗をかけ、有翅アブラムシの飛来を防ぐ。本ぽではシルバーポリマルチを使い、発病株は速やかに抜き取る
- えそモザイク病:千葉県ではソラマメえそモザイクウイルスによる発生が認められる。土壌伝染性で、土壌微生物であるポリミキザ菌が媒介するとされる。発病株は速やかに抜き取り、土壌消毒を行う
- アブラムシ類:育苗時から発生に注意し、黄色粘着テープを施設の出入口や開口部の近く、または苗の近くにつるして有翅成虫の飛来を確かめる。施設の開口部には寒冷紗や防虫ネットを張り、マルチはシルバーポリマルチなど忌避効果のあるものを使う
- 赤色斑点病は4月上旬ごろから薬剤を散布する。輪紋病は1〜2月から発病し、4月ころまん延する。立枯病の発病ほ場は2〜3年輪作する
島根県農業技術センター 島根|赤色斑点病
- 赤色斑点病(チョコレート斑点病)は葉や茎、まれに莢にも発生する。葉では赤褐色の小斑点が直径1〜2mmの円形に広がり、内部は淡褐色でややへこんだ、チョコレート色のドーナツ型の病斑になる
- 病原菌は被害植物の上で黒色の菌核をつくって夏を越し、晩秋から翌春にかけて胞子が飛んで発病させる
- 防除法:収穫後の茎は抜き取って処分する。薬剤防除を行う
鳥取県伯耆町(監修:西部農業改良普及所) 鳥取西部|家庭菜園向け
- 栽培暦の表では、赤色斑点病とさび病は5月、アブラムシ類は秋(10〜11月)と5月に多発する時期として示されている
- 発生が初期のうちに早めに防除する
- ネキリムシ類は非常に多くの植物を食害するため、作付け予定のほ場は定植1か月前から雑草などをできるだけ生やさないようにする
JA山武郡市(千葉県) 千葉・九十九里沿岸|秋まき
近年、そらまめ産地では土壌伝染性のウイルス病が増えている。感染すると枯れたり、葉や莢に病斑が出たりして出荷できないことが多い。原因は土壌中の菌とされ、ほ場からほ場へ広がる可能性もあるため、土壌消毒などの技術で拡大を最小限に抑えている。
鹿児島県 鹿児島|露地(有機栽培の事例)
生育後半は高温多湿で病害の発生が多くなるので、排水に努める。
各資料には具体的な農薬名も載っていますが、農薬の登録内容は変わることがあるため、本記事では挙げていません。千葉県とJA全農いばらきの資料も、使用前にラベルなどで最新の登録内容を確認するよう求めています。
なぜ違うのか
- 作型と発生時期が重なる:伯耆町の栽培暦では、アブラムシ類の多発期は育苗・定植の秋と5月の2回です。千葉県は育苗時からのアブラムシ対策を挙げ、JA全農いばらきは4月頃からの急増を挙げています。どの時期に注意するかは、作型の播種時期と開花・結実期によって変わります。
- 土壌伝染のえそモザイク病:千葉県の防除指針は「本県では」発生が認められるとしており、JA山武郡市も産地で増えていると書いています。土を介してほ場から広がるため、抜き取りと土壌消毒という、ほ場単位の対策になっています。