いちごの定植で気をつけること

ビニールハウスの高設ベッドにいちご苗を定植している様子

いちごの定植(苗を本ぽ=栽培するほ場やベンチに植え付ける作業)で気をつけたい点を、農研機構・県・JAの資料で比べました。いつ植えるか → どの苗を → どんな本ぽに → どう植えて → 植えた後どう守るかの順に、各機関の見解が一致する点と違う点を整理しています。数値はいずれも、各資料が対象とした条件での目安です。

2. いつ植えるか:花芽分化と作型

各機関の見解のまとめ

  • 一致している点:一季成り性いちごの促成・超促成栽培では、苗の中に花のもと(花芽)ができたこと(花芽分化)を顕微鏡で確かめ(検鏡)、確認したら時間をおかずに植えることが、各機関の基本になっています(農研機構ほか・栃木県・安足・JA埼玉中央・静岡県)。花芽ができる前に植えると花芽分化が遅れて減収し(農研機構ほか)、分化から植え付けが遅れても減収する(栃木県)とされ、早すぎても遅すぎても減収につながるという点で一致しています。
  • 違う点:具体的な定植日は、資料によって8月上旬から9月下旬まで、1か月半以上の幅があります。また四季成り性いちごでは、春に植える作型が示されています。

一季成り性(促成・超促成)

農研機構ほか 北海道|とちおとめ|促成・超促成・高設

  • 花芽が未分化な苗を定植すると栄養成長になり、花芽分化が遅れて減収する。計画的に花芽を検鏡し、花芽分化を確認してから定植する
  • 超促成栽培:採苗6月下旬、花芽分化処理を7月下旬までに済ませ、8月上旬に定植し、10月上旬から収穫を始める
  • 年内収量の確保のため、葉数4〜5枚、クラウン径8.0〜10.0mmで花芽分化した苗を、8月下旬までに定植し終える

出典:農研機構ほか『大規模いちご生産技術導入マニュアル』

栃木県 栃木|とちおとめ|促成

  • 「とちおとめ」は花芽分化期が定植適期
  • 花芽分化7日後の定植では、分化時に定植したものに比べて収量が約15%減少。初期生育が抑えられ、早期夜冷では頂花房の着花数が25%減少し、開花始期も7日遅れた
  • 花芽分化後は速やかに定植する

出典:栃木県「いちご『とちおとめ』の栽培技術」

栃木県安足農業振興事務所 栃木|とちおとめ|促成

花芽の検鏡は必ず実施し、作型に合わせた花芽分化ステージで適期に定植する。「とちおとめ」の主な作型の目安は次のとおり。

作型処理開始定植時期定植時の花芽ステージ
夜冷早出し8/1〜59/1〜5花房分化期前後で定植
夜冷普通8/11〜159/7〜10花芽分化期で定植
夜冷普通8/25〜9/59/10〜15花芽分化期で定植(※)
低温暗黒8/28〜9/10前後花芽分化期で定植(※)
ポット—9/15〜20花芽分化期で定植(※)

※原資料では「花芽分化期で定植」の欄から下向きの矢印で示されています。同資料では、夜冷早出しは7月20日〜8月10日までに夜冷処理を開始するもの、夜冷普通は8月11日以降に開始するものとしています。

出典:栃木県安足農業振興事務所「いちご育苗後半の栽培管理のポイント」

JA埼玉中央 埼玉|とちおとめ|促成

「とちおとめ」の定植時期は花芽分化確認直後。埼玉県での定植適期は、ポット育苗で9月10日〜15日前後、無仮植育苗で9月25日前後。

出典:JA埼玉中央「いちご(とちおとめ)の管理ポイント 育苗後半~定植まで」(2013年)

福岡県農業総合試験場 福岡|あまおう|早期作型

夜冷短日処理や低温暗黒処理をした苗を9月上中旬に定植する早期作型は、普通期の定植時期(9月下旬)に比べて気温が高く、定植後の生育が旺盛になりやすい。

出典:福岡県農業総合試験場研究報告26「福岡県におけるイチゴ‘あまおう’の早期作型で1~2月に安定出荷するための有機配合肥料による最適基肥量」(2007年)

静岡県農林技術研究所 静岡|きらぴ香|超促成・高設

  • 超促成作型では、7月中旬から苗の夜冷短日処理を始め(処理期間の目安は約1ヶ月)、花芽分化確認後の8月中旬頃に定植する。定植後から10月上中旬頃まで、本ぽでクラウン冷却処理を行う
  • 経営指標では、超促成は8月中旬定植・10月中旬から収穫、普通は9月中旬定植・12月上旬から収穫としている

出典:静岡県農林技術研究所「きらぴ香」作期拡大技術マニュアル

佐賀県農業試験研究センター 佐賀北部の中山間地|いちごさん|トンネル

中山間地の夏季冷涼な条件を活かして花芽分化を前進化させ、高単価な年内に収量を確保する。「いちごさん」のトンネル栽培で、10月出荷に必要な定植時期は遅くとも8月中旬と考えられる。

出典:佐賀県農業試験研究センターニュース第21号

四季成り性(夏秋どり)

農研機構ほか 北海道|すずあかね(四季成り)|夏秋どり・高設

四季成り性「すずあかね」は長日条件で花芽を形成しやすく、2〜3月に定植すると6〜12月まで収穫できる。

出典:農研機構ほか『大規模いちご生産技術導入マニュアル』

栃木県 栃木|なつおとめ(四季成り)|夏秋どり

「なつおとめ」は4月頃に定植する「春定植」が一般的な作型。定植時期は収穫開始予定日の2ヶ月前(4月上旬から5月上旬)が目安。

出典:栃木県「四季成り性いちご品種『なつおとめ』の夏秋どり栽培技術」

比較:定植時期の目安

機関地域品種作型・栽培方式定植時期の目安定植の条件
農研機構ほか北海道とちおとめ超促成・高設8月上旬花芽分化処理を7月下旬までに済ませる
静岡県静岡きらぴ香超促成・高設8月中旬頃7月中旬からの夜冷短日処理後、花芽分化を確認
佐賀県佐賀北部の中山間地いちごさん10月出荷・トンネル遅くとも8月中旬—
農研機構ほか北海道とちおとめ促成・高設8月下旬までに葉数4〜5枚・クラウン径8.0〜10.0mmで花芽分化した苗
安足栃木とちおとめ夜冷・低温暗黒・ポット9月1日〜20日(作型別)作型に合わせた花芽分化ステージ
福岡県福岡あまおう早期作型/普通期9月上中旬/9月下旬早期作型は夜冷短日・低温暗黒処理の苗
静岡県静岡きらぴ香普通・高設9月中旬—
JA埼玉中央埼玉とちおとめポット育苗/無仮植育苗9月10〜15日前後/9月25日前後花芽分化確認直後
農研機構ほか北海道すずあかね(四季成り)夏秋どり・高設2〜3月—
栃木県栃木なつおとめ(四季成り)夏秋どり4月上旬〜5月上旬収穫開始予定日の2ヶ月前
奈良県奈良(家庭菜園)露地10月中旬頃—

なぜ違うのか

  • 作型(花芽分化の促し方):安足の表では、夜冷処理を早く始める「夜冷早出し」の定植が最も早く、処理開始の欄が空欄のポット育苗が最も遅くなっています。静岡県の超促成も、7月中旬からの夜冷短日処理で花芽分化を早めることで、8月中旬の定植としています。
  • ねらう出荷時期:静岡県の超促成は10月中旬からの収穫、佐賀県は10月出荷をねらった作型として、それぞれ定植時期を示しています。
  • 地域の気候:佐賀県は、中山間地の夏の涼しさを活かして花芽分化を早めるとしています。
  • 一季成りか四季成りか:一季成り性は低温・短日で花芽ができ、四季成り性は長日で花芽分化が促されるため(栃木県「なつおとめ」資料の「イチゴの花芽分化特性」の図、農研機構ほか)、四季成り性では春に植える作型が示されています。

花芽