いちごの定植で気をつけること

ビニールハウスの高設ベッドにいちご苗を定植している様子

いちごの定植(苗を本ぽ=栽培するほ場やベンチに植え付ける作業)で気をつけたい点を、農研機構・県・JAの資料で比べました。いつ植えるか → どの苗を → どんな本ぽに → どう植えて → 植えた後どう守るかの順に、各機関の見解が一致する点と違う点を整理しています。数値はいずれも、各資料が対象とした条件での目安です。

6. 植えた直後の水:活着までのかん水

各機関の見解のまとめ

  • 一致している点:活着するまでは、新しい根が出るクラウン付近を乾かさないよう、こまめにかん水することが全機関に共通しています。活着後は、一度に多く与えるより少量ずつ回数を分けて与え、土壌水分をpF1.8程度に保つとする資料が栃木県に2つあります。
  • 違う点:こまめなかん水を続ける期間(2〜3日から14日間)、回数(1日1回から数回)、方法(株元か頭上か)、使う水(原水・水温)の目安は資料によって異なります。

栃木県 栃木|とちおとめ|促成

  • 「とちおとめ」は発根がやや遅いため、クラウン付近が乾かないよう一日数回こまめにかん水する
  • 活着後は土壌水分をpF1.8程度に維持して草勢を確保し、少量多回数のかん水を行う
  • 定植後の生育期に一度に多量にかん水すると、ハウス内の湿度も高くなり、品質の低下や傷み果の発生につながる。総かん水量を同じにした試験では、週2回または毎日少量ずつかん水すると土壌水分が安定し、増収につながった

出典:栃木県「いちご『とちおとめ』の栽培技術」

栃木県 栃木|なつおとめ(四季成り)|夏秋どり

「なつおとめ」の定植直後は、クラウン付近が乾かないよう一日数回こまめにかん水する。活着後は土壌水分をpF1.8程度に維持するよう、少量多回数でかん水する。

出典:栃木県「四季成り性いちご品種『なつおとめ』の夏秋どり栽培技術」

栃木県安足農業振興事務所 栃木|とちおとめ ほか|促成

  • 定植前日に、ほ場へ十分かん水する
  • 定植後10〜14日間(活着まで)は1日2〜3回かん水する
  • 活着後からマルチを張るまでは、ベッド全体が適度に湿った状態を保つ

出典:栃木県安足農業振興事務所「いちご育苗後半の栽培管理のポイント」

JA埼玉中央 埼玉|促成

定植後約1週間は株元かん水を行って根鉢との隙間を埋め、クラウン部付近の土の表面が常に湿っている状態を保つよう、少量ずつこまめにかん水する。

出典:JA埼玉中央「いちご定植前後の管理と高温対策について」(2024年・東松山農林振興センター)

JA埼玉中央 埼玉|とちおとめ|促成

クラウン部周辺に湿気があるとそこから不定根が発生し、この不定根の発生が重要。少量多回数・一日数回のこまめなかん水を行う。

出典:JA埼玉中央「いちご(とちおとめ)の管理ポイント 育苗後半~定植まで」(2013年)

静岡県農林技術研究所 静岡|きらぴ香|超促成・高設

「きらぴ香」の超促成は夏の高温時の定植になるため、定植後1週間は必ず1日1回株元に手かん水して活着を促す。

出典:静岡県農林技術研究所「きらぴ香」作期拡大技術マニュアル

農研機構ほか 北海道|とちおとめ・すずあかね|高設

  • 一季成り「とちおとめ」(高設):定植2〜3日前に数回かん水して培地に十分に水分を含ませておく。定植後2〜3日程度は原水のみでかん水し、気温が上がり始める午前中に、水温12〜15℃を目安に行う。活着するまでは遮光資材を張って株の脱水を防ぐ
  • 四季成り「すずあかね」(高設):定植後5〜7日程度は原水のみで頭上から手かん水し、午前中に、水温12〜15℃を目安に行う

出典:農研機構ほか『大規模いちご生産技術導入マニュアル』

福岡県農業総合試験場 福岡|あまおう|早期作型・土耕

試験での管理方法として、定植後14日間はクラウン部が常に湿った状態になるよう1日2回手かん水し、その後はかん水チューブで深さ20cmの土壌pFを1.8〜2.3に管理した。

出典:福岡県農業総合試験場研究報告26「福岡県におけるイチゴ‘あまおう’の早期作型で1~2月に安定出荷するための有機配合肥料による最適基肥量」(2007年)

機関品種・栽培方式定植前活着までの期間回数・方法活着後
安足とちおとめ ほか・促成前日にほ場へ十分かん水定植後10〜14日間1日2〜3回マルチまでベッド全体を適度に湿らせる
栃木県とちおとめ・促成—活着まで一日数回、こまめにpF1.8程度・少量多回数
栃木県なつおとめ・夏秋どり—定植直後一日数回、こまめにpF1.8程度・少量多回数
福岡県(試験の管理)あまおう・早期作型・土耕—定植後14日間1日2回の手かん水深さ20cmでpF1.8〜2.3
JA埼玉中央促成—定植後約1週間株元かん水、少量ずつこまめに—
静岡県きらぴ香・超促成・高設—定植後1週間必ず1日1回、株元に手かん水—
農研機構ほかとちおとめ・高設2〜3日前に数回かん水定植後2〜3日程度原水のみ・午前中・水温12〜15℃株養成期から給液
農研機構ほかすずあかね・高設—定植後5〜7日程度原水のみ・頭上から手かん水・午前中・水温12〜15℃—

なぜ違うのか

  • 栽培方式:高設栽培(農研機構ほか)では、原水での手かん水から養液の給液に切り替える時期として示され、土耕(栃木県・福岡県)では活着後の土壌水分(pF)の目安とあわせて示されています。
  • 定植時期の気温:静岡県は、超促成が夏の高温時の定植になることを理由に、1週間の毎日の手かん水を「必ず」としています。
  • かん水の位置:JA埼玉中央(2013年)は、炭疽病の発生を助長するとして頭上かん水を避け、株元にかん水するよう指導しています。一方、農研機構ほかは北海道の高設で春に植える四季成り「すずあかね」について頭上からの手かん水を示しており、地域・作型・品種がいずれも異なる条件での記述です。

かん水