いちごの定植で気をつけること

ビニールハウスの高設ベッドにいちご苗を定植している様子

いちごの定植(苗を本ぽ=栽培するほ場やベンチに植え付ける作業)で気をつけたい点を、農研機構・県・JAの資料で比べました。いつ植えるか → どの苗を → どんな本ぽに → どう植えて → 植えた後どう守るかの順に、各機関の見解が一致する点と違う点を整理しています。数値はいずれも、各資料が対象とした条件での目安です。

4. 植える前の本ぽ準備:土壌・培地と基肥

各機関の見解のまとめ

  • 一致している点:基肥(最初に入れる肥料)は、土壌診断や残っている肥料を踏まえて量を決め、定植後の初期に肥料が効きすぎないようにすることが、栃木県・安足・栃木県「なつおとめ」資料・福岡県・農研機構ほかに共通しています。初期の肥効が高すぎると、次の花房の花芽分化が遅れる、乱形果が増える、草勢が強くなりすぎるといった影響が挙げられています。
  • 違う点:基肥の窒素量は、10a当たり8kgから20kgまで資料によって大きく異なります(下の表)。高設の養液栽培では、定植後しばらく施肥をしないとする資料もあります。

基肥(窒素の目安)

栃木県 栃木|とちおとめ|促成

  • 「とちおとめ」本ぽの基肥窒素は10a当たり15〜20kgが基準。堆肥を多く入れた場合や残存肥料が多い場合は、土壌診断に基づいて減肥する
  • 初期の肥効が高いと第1次腋花房の葉数が増えたり、乱形果が多くなったりするため、有機質肥料や初期の溶出が少ない緩効性肥料を主体にする

出典:栃木県「いちご『とちおとめ』の栽培技術」

栃木県安足農業振興事務所 栃木|とちおとめ・スカイベリー|促成

  • 「とちおとめ」の作型別の窒素(10a当たり):夜冷早出し8〜12kg、夜冷普通12〜15kg、低温暗黒(株冷)20kg、ポット15〜18kg
  • 「スカイベリー」は基肥が多いと「先端まだら果」が出やすくなるため、残肥や堆肥、土壌改良資材などの肥料成分も含めて窒素成分10kg/10aとなるよう施用する
  • 基肥の施用は定植予定の10日前には終え、十分に土になじませておく

出典:栃木県安足農業振興事務所「いちご育苗後半の栽培管理のポイント」

JA埼玉中央 埼玉|とちおとめ|促成

「とちおとめ」の基肥は、窒素成分で15kg/10aを目安に施用する。

出典:JA埼玉中央「いちご(とちおとめ)の管理ポイント 育苗後半~定植まで」(2013年)

福岡県農業総合試験場 福岡|あまおう|早期作型・土耕

  • 第1次腋果房の花芽分化の時期に肥料が効いて体内の窒素濃度が高まると、花芽が分化せずに葉がつくられる
  • 筑後地域の「とよのか」の基肥基準は、普通期作型の窒素14〜16kg/10aに対し、早期作型はその2割減
  • 「あまおう」の早期作型では、とよのか専用肥料なら窒素8kg、あまおう専用肥料なら12kg(10a当たり)で、年内収量を確保しつつ1〜2月の収量が高くなった。最適な基肥窒素量は、あまおう専用肥料で12kg/10a
  • 「あまおう」は「とよのか」に比べて、第1次腋果房の花芽分化が窒素の多少の影響を受けやすいと考えられる
  • 基肥前の土壌ECが高い場合は減肥が必要。砂壌土などでは肥効が強く出て草勢が旺盛になりやすいため、さらに減肥が必要

出典:福岡県農業総合試験場研究報告26「福岡県におけるイチゴ‘あまおう’の早期作型で1~2月に安定出荷するための有機配合肥料による最適基肥量」(2007年)

福岡県農業総合試験場 福岡|とよのか|促成・2芽苗

「とよのか」のクラウン利用2芽苗では、基肥の窒素を慣行より5kg/10a程度増やすと、11〜1月の収量が増えた。

出典:福岡県農業総合試験場「イチゴ『とよのか』のクラウン利用2芽苗の定植方法及び窒素施用量」(平成9年度)

栃木県 栃木|なつおとめ(四季成り)|夏秋どり

基肥は10a当たり窒素16kgを基準とし、土壌診断結果に基づいて決める。初期の肥効が高いと草勢が旺盛になりすぎることがあるため、基肥はやや控え、生育を見ながら追肥するとよい。

出典:栃木県「四季成り性いちご品種『なつおとめ』の夏秋どり栽培技術」

農研機構ほか 北海道|とちおとめ|超促成・高設養液

  • 定植〜1週間は原水のみで、活着するまで手かん水。その後の株養成期から給液を始める
  • 8月上旬の高温長日条件で定植する超促成栽培では、施肥で過栄養になると第2果房の花芽分化が遅れる場合があるため、定植後は培地内の残存窒素を利用してかん水のみで管理し、第2果房の検鏡確認後から施肥を始める

出典:農研機構ほか『大規模いちご生産技術導入マニュアル』

機関地域品種作型・栽培方式基肥窒素(10a当たり)条件・注記
栃木県栃木とちおとめ促成15〜20kg(基準)堆肥・残肥が多い場合は土壌診断で減肥
安足栃木とちおとめ夜冷早出し/夜冷普通/低温暗黒/ポット8〜12kg/12〜15kg/20kg/15〜18kg作型別
安足栃木スカイベリー—10kg残肥・堆肥・土壌改良資材の成分を含めて
JA埼玉中央埼玉とちおとめ促成15kg2013年の記事
栃木県栃木なつおとめ(四季成り)夏秋どり16kg(基準)基肥はやや控え、追肥で調整
福岡県福岡(筑後)とよのか普通期/早期作型14〜16kg/その2割減筑後地域の基肥基準として紹介
福岡県福岡あまおう早期作型・土耕12kg(あまおう専用肥料)、8kg(とよのか専用肥料)1〜2月の収穫の谷を防ぐための試験
福岡県福岡とよのか促成・2芽苗慣行+5kg程度11〜1月の収量が増加
農研機構ほか北海道とちおとめ超促成・高設養液定植後はかん水のみ第2果房の検鏡確認後から施肥

なぜ違うのか

  • 作型(定植時期の気温):福岡県は、早期作型は普通期より定植時期の気温が高く、定植後の生育が旺盛になりやすいことを示し、基肥基準が2割少ないとしています。農研機構ほかも、8月上旬の高温長日条件で定植する超促成では、過栄養で第2果房の花芽分化が遅れる場合があるとしています。安足の表でも、定植が最も早い夜冷早出しの値が最も少なくなっています。
  • 品種:福岡県は「あまおう」を「とよのか」より窒素の影響を受けやすいと考察し、安足は「スカイベリー」で基肥が多いと先端まだら果が出やすいとしています。
  • 土壌:福岡県は土壌ECが高い場合や砂壌土などで、栃木県は堆肥や残存肥料が多い場合に、それぞれ減肥が必要としています。
  • 苗・栽培方式:芽数の多いクラウン利用2芽苗(福岡県)では増肥、高設の養液栽培(農研機構ほか)では施肥を始める時期そのものを遅らせる、という形で示されています。

土壌・培地の酸度(pH)と土づくり

pHは、高設栽培の培地と畑(土耕)とで、対象も示されている値も異なります。

農研機構ほか 北海道|すずあかね・とちおとめ|高設

高設の有機混合培地1リットルに粉状の炭カル3g、過石2g、ようりん1gを混和し、pHを矯正した無病培地を使用する。矯正後のpHは、四季成り「すずあかね」の項ではpH6.5〜7.0、一季成り「とちおとめ」の項ではpH6.0〜7.0。

出典:農研機構ほか『大規模いちご生産技術導入マニュアル』

北海道根室振興局 北海道根室|露地

畑の準備では、堆肥と石灰を全面に施用して深く耕す。改良目標はpH6.5。

出典:北海道根室振興局資料

奈良県 奈良|家庭菜園|露地

家庭菜園向けの露地栽培では、9月末に1平方メートル当たり化学肥料150g、苦土石灰100gを畑全面にまいて耕し、幅1.2mの高畝をつくる。

出典:奈良県「イチゴづくりのポイント」