いちごの定植で気をつけること
いちごの定植(苗を本ぽ=栽培するほ場やベンチに植え付ける作業)で気をつけたい点を、農研機構・県・JAの資料で比べました。いつ植えるか → どの苗を → どんな本ぽに → どう植えて → 植えた後どう守るかの順に、各機関の見解が一致する点と違う点を整理しています。数値はいずれも、各資料が対象とした条件での目安です。
8. 作型で何が変わるか:早見表と活着後の管理
ここまでのテーマで出てきた違いの多くは、作型(一季成りか四季成りか、花芽分化をどう促すか、いつ収穫するか)で説明されていました。各資料の内容を作型別にまとめると、次のようになります。
| 項目 | 一季成り・超促成 | 一季成り・促成 | 四季成り・夏秋どり | 露地(家庭菜園) |
|---|---|---|---|---|
| 定植時期の例 | 8月上旬(農研機構ほか・北海道)、8月中旬頃(静岡) | 8月下旬まで(農研機構ほか・北海道)、9月上旬〜下旬(安足・JA埼玉中央・福岡) | 2〜3月(農研機構ほか・北海道)、4月上旬〜5月上旬(栃木) | 10月中旬頃(奈良) |
| 定植の合図 | 花芽分化の確認後 | 花芽分化の確認直後 | 収穫開始予定日の2ヶ月前(なつおとめ) | — |
| 株間の例 | — | 24〜25cm前後(栃木・福岡・JA埼玉中央)、18cm(奈乃華) | 24〜27cm(なつおとめ)、25〜30cm(すずあかね・高設) | 25cm(奈良) |
| 基肥の考え方 | 高設では定植後かん水のみ、第2果房の検鏡後から施肥(農研機構ほか) | 作型・品種・土壌で8〜20kg/10a。定植の早い作型では少なめ(安足の夜冷早出し、福岡の早期作型) | 基準16kg/10aだが、やや控えて追肥で調整(なつおとめ) | 1㎡当たり化学肥料150g・苦土石灰100g(奈良) |
| 定植後の暑さ対策 | 暑熱対策は必須、クラウン冷却(静岡) | 遮光・換気・地温を下げる(安足・JA埼玉中央・栃木県農業試験場) | 梅雨明け〜9月中旬に遮光40〜60%(なつおとめ) | — |
活着後の最初の管理(作型による違い)
活着した後の最初の管理でも、作型によって逆の考え方が示されている項目があります。
- マルチ(畝を覆うフィルム)を張る時期:促成のJA埼玉中央は、高温の時期や第2花房の花芽分化前にマルチを張ると第2花房の花芽分化が妨げられるとして、最低気温15℃以下が3日以上続く頃を目安にしています。一方、春に植える四季成り「すずあかね」の高設(農研機構ほか)では、地温の上昇を抑える白黒ダブルマルチ(白い面を表)を定植後すみやかに張るとしています。福岡県(とよのか2芽苗)は、定植前にマルチを張っても年内収量は慣行と同等だったとしています。
- 定植直後に出る花房:四季成りでは、株ができる前の花房は摘み取るとされています(「なつおとめ」「すずあかね」)。
JA埼玉中央 埼玉|促成
- マルチ張りの目安の時期は、最低気温15℃以下が3日以上続く頃
- マルチ張りの時期が高温だったり、第2花房の花芽分化前にマルチを張ったりすると、第2花房の花芽分化が妨げられて中休みの原因になる
農研機構ほか 北海道|すずあかね(四季成り)|高設
- マルチは、地温上昇の抑制効果の高い白黒ダブルマルチを使い、白色面を表にする。定植後すみやかにマルチングし、定植した箇所に穴を開ける
- 株養成期間中に出る花房やランナーは摘除する
栃木県 栃木|なつおとめ(四季成り)|夏秋どり
定植直後の株ができていない時期に出る花房は、着果させても収量性が低く、7月以降の収量も下がる。定植後まもなく出る花房は適宜摘み取り、定植後30〜40日を着果開始の目安にする。
なぜ違うのか:促成では、高温期や第2花房の花芽分化前のマルチが花芽分化を妨げるとして時期を遅らせる(JA埼玉中央)のに対し、春に植える高設の四季成りでは、地温の上昇を抑える白黒ダブルマルチを白い面を表にして定植後すぐに張る(農研機構ほか)としています。作型によって、マルチの使い方そのものが違うと読めます。